正しい係り受けを使う

副詞は、係り受けを正しく使うようにします。係り受けが崩れていると、文章が分かりにくくなるためです。

例えば、「なぜなら」「もし」といった係り受け表現を作る、陳述の副詞は、読み手に対して、副詞の後にくる内容を想像させる機能があります[*参考]。しかし、陳述の副詞から推察される内容と、その後に続く内容とが異なつてしまうと、想像と内容が一致しなくなり、意味の把握が難しくなります。

副詞の係り受けとは

副詞の係り受けとは「副詞」+「決まり文句」で作られる表現です。別名呼応表現とも呼びます。例えば、「なぜなら〜だからだ」などが係り受けです。文末には必ず、ペアの言葉を使います。

係り受けの例

以下は、係り受けが誤っている例です。「なぜなら」は「〜から」で受ける必要がありますが、NG例では「なぜなら〜ます」となっています。

私は明日休みます。なぜなら、母の病院に付き添います

私は明日休みます。なぜなら、母の病院に付き添うからです。

「なぜなら」に呼応して「から」が入ります。

代表的な係り受け

係り受けの種類には、文の終わりに「打ち消し」、「仮定」、「推量」、「疑問」、「願望」、「たとえ」を伴うものがあります。

# 係り受け(呼応表現)
1 打ち消し 決して〜ない、まったく〜ない、全然〜ない
2 仮定 もし〜たら、たとえ〜ても
3 推量 おそらく〜だろう、まさか〜だろう
4 疑問 なぜ〜か、どうして〜か
5 願望 ぜひ〜ほしい(ください、たい)、どうか〜ください
6 たとえ まるで〜ようだ、ちょうど〜ようだ

1. 打ち消し

文の終わりに打ち消しを伴う表現です。

(1)決して〜ない

彼女のことは決して忘れる。

彼女のことは決して忘れない

(2)まったく〜ない

私は事件とはまったく関係がある。

私は事件とはまったく関係がない

(3)全然〜ない

全然分かる。

全然分からない

2. 仮定

文の終わりに仮定を伴う表現です。

(1)もし〜たら

もし明日彼が来るから、約束通り契約します。

もし明日彼が来たら、約束通り契約します。

(2)たとえ〜ても

たとえ嫌われるから、本当のことを言います。

たとえ嫌われても、本当のことを言います。

3. 推量

文の終わりに推量を伴う表現です。

(1)おそらく〜だろう

彼の本はおそらくヒットだ。

彼の本はおそらくヒットするだろう

(2)まさか〜だろう(打ち消し推量)

先生は、まさか裏切らない。

先生は、まさか裏切らないだろう

4. 疑問

文の終わりに疑問を伴う表現です。

(1)なぜ〜か

なぜ悪い習慣をやめないの。

なぜ悪い習慣をやめないの

(2)どうして〜か

どうして来ないの。

どうして来ないの

5. 願望

文の終わりに願望を伴う表現です。

(1)ぜひ〜ほしい(ください、たい)

ぜひ角が立たないように言って。

ぜひ角がたたないように言ってほしい

(2)どうか〜ください

どうか私にも教えて教えて。

どうか私にも教えてください

6. たとえ

文の終わりにたとえを伴う表現です。

(1)まるで〜ようだ

娘はまるで太陽だ。

娘はまるで太陽のようだ

(2)ちょうど〜ようだ

昨日のことは、ちょうど夢だ。

昨日のことは、ちょうど夢のようだ

[参考]
陳述副詞という分類は、近代国語学の始祖である山田孝雄氏の『日本文法学概論』(1936)によって展開されました。このほか、陳述副詞に関する研究は数多くされています。より詳しい副詞の解説は、庵功雄氏らによる『初級を教える人のための日本語文法ハンドブック』(2001)をご参照ください。