「主語と述語(動詞)の関係」を意識する

分かりやすく説得力がある文章を書くためには、「主語と述語(動詞)の関係」を意識します。文には、主語と動詞の他にもさまざまな要素がありますが、中でも「何がどうした」のかは、読者が要旨をつかむために必要不可欠な言葉です。主語と述語の関係で特に意識すべきだと言われているのが、「主語を明確にする」「動詞を力強くする」「主語と述語の関係を明確にする」の3点です[*出典]。3つのポイントを押さえて主語と述語の関係を明確にすることで、文の意図が明確に伝わるようになります。

主語と述語の関係で意識するポイント

  1. 主語を明確にする
  2. 動詞を力強くする
  3. 主語と述語の距離を近くする

1. 主語を明確にする

「文脈上の主語」が、「文法上も主語」にもなるようにします。文脈で主語だと感じられるものが、文法上では主語ではない状態になると、文が分かりにくくなります。

昨日、母が弟のボールを捨てた。そのボールは去年兄が買ってくれたものだ。

昨日、弟のボールが母に捨てられた。そのボールは去年兄が買ってくれたものだ。

文脈上の主語は両方とも「ボール」です。しかし悪い例の文章は、前半の主語が「母」であり、2つの文の主語が揺らいでいます。そのため修正後の文章では、両方の文の主語を「ボール」に統一することで、読み手の分かりやすさにつなげています。

2. 動詞を力強くする

曖昧な動詞を避けて力強い能動態の構文を選ぶことで、文の説得力を増すことができます。そのためには特に、能動態と受動態の使い分けと、動詞の選び方が重要です。

文の説得力を意図した状態にするためには、意識して4つの構文を使い分けます。力強く分かりやすい状態にするには能動態を使い、逆に意識的に文章を弱めたい時には受動態や修飾節を使います。受動態とは、「AがBされる」のように動作を受ける人を主語にした受け身の形のことを言います。能動態とは、その反対に「AがBする」のように動作をする人を主語にした形のことを言います。

主張の強さ
【強】 能動態:動作をする人を主語にした形
【中】 受動態:動作を受ける人を主語にした形
【弱】 修飾節:連体修飾語を使った形
【最弱】 動詞由来の名詞:動詞を名詞化した形

以下の例では、下に行くに従って、文章は曖昧に弱められていきます。

【強】 私たちは外出を禁止することで、団員の意識を統一しようとした。
【中】 外出が禁止されたことで、団員の意識が統一された。
【弱】 禁止となった外出によって、団員の意識が統一された。
【最弱】 外出禁止が団員の意識を統一させた。

3. 主語と述語の距離を近くする

主語と述語の距離は、できるだけ近くします。主語と述語の間に多く余計な語句が入ると、結びつきが弱くなり、読み手の理解が追いつかなくなるためです。主語と述語の距離が遠い場合には、文を分けたり削除したりすることで、主語と述語の距離を近づけます。

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悪い例は、主語「弊社は」と述語「展開しております」の距離が遠いことで文の意味がわかりにくくなっています。文を分割して、主語と述語との距離を近づけます。

[出典]
H.J.Tichy『Effective Writing for Engineers, Managers, Scientists Second Edition』John Wiley & Sons, Inc、1988