指す内容を明確にする

代名詞を使う際は、誰が読んでも、代名詞が指すものを正しくとらえられるようにします。代名詞が何を指すかが曖昧になることで、文章で伝えたい内容が読み手に正確に伝わらなくなります。代名詞が指すものが曖昧な状態とは、「それ」などの代名詞が指す内容が分かりにくいような場合です。たとえば、「それ」が指すものが前の段落にあるために、何を指しているのかが分かりにくい場合や、筆者名がない記事で「私」と書かれているような場合です。

代名詞は曖昧さを回避して使うべきという指摘は、日本語でも英語でも多くの文献に見られます。一例として、厳格なライティングルールを定めるアメリカ航空宇宙局によると「代名詞に関する多くの文法ミスは先行詞がどれなのかが曖昧なことにより起こる」と指摘されています[*出典1]

人称代名詞の注意点

人称代名詞(例:「私」「私たち」)を使う場合は、代名詞が指す対象が誰なのかを、文章の中で明確にします。たとえば、筆者の意見を書くために「私」を使う際には、文章の中に「筆者が誰なのか」が記載されている必要があります。所属する会社全体の意見を書くために「私たち」を使う際には、文章の中に団体名が記載されている必要があります。

指示代名詞の注意点

指示代名詞(例:「それ」)を使う場合は、指示語が何を指すのかを明確にします。指示代名詞を使うと文章が曖昧になりやすいため、正式な書類では「指示代名詞の漠然とした使用」をさけるべきだといわれています[*出典2]

指示代名詞の漠然とした参照を解決する方法には、指示語を崩して名詞を再び記載する方法と、補足となる名詞を補う方法とがあります。指示語が何を指し示すのかが曖昧になりそうな場合には、この2つの方法が使えないか検討します。

指示語が差し示すものが曖昧になりそうな場合の解決方法

  1. 指示語を崩して名詞を再び記載する
  2. 名詞を補足する

1. 指示語を崩して名詞を再び記載する。指示語が差し示すものが曖昧になりそうな場合には、指示語を使わずに名詞を再び書きます。

いよいよカードが最後の1枚となった。それを使う。

いよいよカードが最後の1枚となった。最後のカードを使う。

指示語(それ)ではなく、名詞(最後のカード)を書いて明確にします。

2. 名詞を補足する。指示語が差し示すものが曖昧になりそうな場合には、指示語に名詞を補足して使います。名詞を補足することで、指示語を使いながら、わかりやすい文章を書くことができます。

いよいよカードが最後の1枚となった。それを使う。

いよいよカードが最後の1枚となった。そのカードを使う。

指示語(それ)ではなく、指示語に名詞を補足(そのカード)して明確にします。

[出典]
1. メアリ・K・マカスキル『NASAに学ぶ英語論文・レポートの書き方 NASA SP-7084 テクニカルライティング』(2012)
2. Wilma R. Ebbitt、David R. Ebbitt『Writer's Guide and Index to English』1981

[参考]
このほか、アメリカ合衆国の代表的なスタイルガイドのひとつである『シカゴスタイル』でも、代名詞の参照先は、明示的であれ、暗示的であれ、明らかにすべきであると述べられています。一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会『日本語スタイルガイド 』では、明らかにするための方法として、代名詞を単独で使わないよう推奨しています。