下請法とは

下請法とは、規模の大きな企業が、規模の小さい企業と請負契約をする際に不当な要求をすることを禁止する法律です。読み方は「したうけほう」と言います。

この下請法は、フリーランスで仕事を行うライターが必ず身につけておきたい知識です。

この記事では、
・どのようなクライアント企業が下請法の対象になるのか
・企業の義務
・企業の禁止行為
について、フリーランスで働くライターにわかりやすく解説します。

下請法の対象となるクライアント企業

実は、全ての企業が下請法の対象になるわけではありません。

下請法の対象になるかならないかは、ライター業務の発注者であるクライアント企業の規模によって変わります

ライターの業務は多くの場合、下請法の適用の対象となる情報成果物の作成委託という取引のジャンルに分類されます。

情報成果物の作成委託では、親事業者(仕事を発注するクライアント企業のこと)の資本金が5000万円超で下請け事業者(ライターのこと)の資本金が5000万円以下の場合、もしくは、親事業者の資本金が1000万円以上5000万円以下で下請け事業者の資本金が1000万円以下の場合には、下請法の対象となります。

情報成果物の作成委託の対象

公正取引委員会『知るほどなるほど下請法』P2より

フリーランスで働くライターの資本金が1000万円を超えないと仮定すると、クライアント企業の資本金が1000万円を超える場合には、下請法の対象になると覚えておきましょう。

仮に、クライアント企業の資本金が1000万円以下の場合にも、クライアント企業が子会社であり、親会社の資本金が1000万円を超える場合には下請法の対象になります。

下請法で定められている親事業者の義務とは?

下請法では、親事業者(ライティングを発注したクライアント企業)の義務として、書面の交付義務、下請代金の支払期日を決める義務、書類を作成・保存する義務、遅延利息の支払い義務があります。

ライター業務では、クライアントと契約書を結ばないままライティングをスタートするというケースも多いのではないでしょうか?実はその時点で下請法に違反しています。

下請法で定められているクライアント企業の義務について、解説します。

クライアント企業の義務1. 書面の交付義務

親事業者には、書面(契約書)の交付義務があります。書面の交付義務は最も基本的な義務なので覚えておきましょう。

契約書には、以下の内容が記載されている必要があります。

契約書の書面に記載する内容

  • 発注内容
  • 費用
  • 支払い期日
  • 支払い方法 など

基本的には発注のたびに契約書を交付することが必要です。ただし、継続的に取引を行なっていて基本的な業務が変わらない場合には、最初のみで毎回書面を出す必要はないとされています。書面については、紙でなくても電子メールやFAXなどでの作成・交付も認められています。

書面でのやりとりは、トラブルになった場合にも弱い立場であるライターを守り、言った言わないというトラブルを避けるためにも非常に役に立ちます。

クライアント企業の義務2. 書類の作成、保存義務

クライアント企業は、ライターとの取引が実際にどのように行われたのか(納品された日や最終的に支払った額など)を書面として記録しておく必要があります。

クライアント企業が保存しておく書面には、以下の内容が記載されている必要があります。

納品後の書面に記載する内容

  • ライターの名前
  • 発注をした日
  • 給付(納品)の内容
  • 給付(納品)を受領した日
  • 検収が完了した日、検収の結果
  • 検収の結果、やり直しが発生した場合の内容と理由
  • 最終的な支払い額、期日
  • 金額に変更があった場合の増減額と理由

この書類の作成・保存を怠った場合には、50万円の罰金が課されます。

クライアント企業の義務3. 支払い期日を定める義務

親事業者であるクライアント企業は、支払い期日を定める義務があります。支払い期日は、下請事業者であるライターから納品があった日から60日以内である必要があります

クライアント企業の義務4. 遅延利息の支払い義務

親事業者であるクライアント企業の支払い遅れがあった場合には、クライアント企業は納品があった日から60日以降に14.6%の遅延利息を支払う必要があります

下請法で定められている親事業者の禁止行為とは?

下請法では、親事業者であるクライアント企業に11の禁止行為が定められています

これは、クライアント企業のほうが取引上強い立場になることを利用して、下請事業者に一方的に不利になることを行なってはいけないということです。

親事業者は以下のような禁止行為を行なってはいけません。

親事業者であるクライアント企業の11の禁止行為

  • 受領を拒否する行為
  • 下請代金の支払いを遅延すること
  • 下請代金を減額すること
  • 返品すること
  • 買い叩きをすること
  • 物の購入やサービスの利用の強制
  • 報復措置をすること
  • 原材料などを早期決済すること
  • 割引き困難な手形を交付すること
  • 不当な経済上の利益の提供の要請
  • 不当なやり直しなどを行わせること

それぞれの禁止行為について、詳しく紹介していきます。

親事業者の禁止行為1. 受領を拒否する行為

親事業者であるクライアントは、依頼した成果物(ライティングした文章)の受け取りを拒否してはいけないと決められています。

例えば、クライアントの指示内容にミスがあったことで成果物が想像していたものと違ったからといって受け取りを拒否してはいけません。天災があったから受け取りを拒否する、ということも許されません。

ただし、成果物に欠陥がある場合や依頼された内容と異なる場合(これを、「責めに記すべき理由がある」場合といいます)には受け取りを拒否することができます。

親事業者の禁止行為2. 下請代金の支払いを遅延すること

親事業者であるクライアントは、下請事業者であるライターから文章の納品があったら、60日以内に代金を支払う必要があると定められています。

60日以内に支払われない場合には、60日を経過した日から年14.6%の遅延利息がかかります。

親事業者の禁止行為3. 下請代金を減額すること

親事業者であるクライアント企業が、発注時に合意した代金を減額することは禁止されています。例えば、発注時には10記事が必要だと言われていたものを、クライアント企業の都合で5記事に変更するのはNGです。

また、減額には例えば以下のようなものも含まれます。
・振込手数料を差し引く
・消費税などの税金を差し引く
・同じ代金だが納品する記事の数を増やす

実は、発注後の代金の減額は下請事業者であるライターの許可があっても行なってはいけません。

ただし、下請事業者であるライターが書いたものに大きな欠陥があったり、納期までに納品されなかった場合には「下請事業者の責めに帰すべき理由」として、減額が認められます。

親事業者の禁止行為4. 返品すること

親事業者であるクライアントは、納品された記事を返品することはできません。

ただし、
・納品された記事が当初依頼した契約内容と異なる
・納品された記事に欠陥がある。不良品だ。
という場合にのみ返品することができるとされています。

不良品(瑕疵がある)で返品する場合にも、すみやかに行わなくてはならず、時間があいてはいけません。

親事業者の禁止行為5. 買いたたきをすること

買い叩きとは、親事業者であるクライアント企業が、下請事業者に対して通常よりも著しく低い価格で、不当に発注することを言います。

クライアント企業は、一方的に価格を押し付けたり、一方的に引き下げたり、同じような取引をする場合よりも著しく低い額を定めることを禁止されています。

価格を決める際にはクライアント企業とライターが双方で十分に話し合う必要があります。

親事業者の禁止行為6. 物の購入やサービスの利用の強制

親事業者であるクライアントが指定した物をライターに購入させるのは禁止されています。物だけでなくサービスを購入強制することも禁止です。

親事業者の禁止行為7. 報復措置をすること

報復措置とは、親事業者であるクライアントが、下請法で禁止されている違法なことを行なったことをライターが公正取引委員会などに報告したことを理由に、取引停止などの報復(仕返し)を行うことです。

親事業者の禁止行為8. 不当な経済上の利益の提供の要請

当初決められていた契約内容を発注した後で変更することは禁止です。下請事業者であるライターが余分な作業を行うことを強いられるためです。

ただし、変更に伴う費用をクライアントが負担する場合や、ライターの利益を不当に害する内容でなければ変更は可能です。

親事業者の禁止行為9. 不当なやり直しなどを行わせること

不当なやり直しとは、ライターには責任がないにも関わらず、発注内容を変更したり、発注時の契約にはない作業をさせたりすることをいいます。ライターのこれまでの作業が無駄になってしまうような変更は原則として禁止されています。

「思っていたイメージと違ったのでやり直してほしい」「好きではないのでやり直してほしい」というような場合に、やり直しを求めること自体は違法ではないのですが、納品した記事が当初の発注内容や条件を満たしているのであれば、クライアントがやり直しに必要な費用を負担する必要があります。

以上が、親事業者が禁止されている行為です。

ほかにも、原材料などを早期決済することや、割引き困難な手形を交付することが定められていますが、これはライターにはあまり関係ありませんので割愛します。

ライターとして、クライアントから業務を受けるうえで、違反だと思われる箇所はありませんでしたか?実は、ライター業は下請法の違反が多いと言われています。

契約書の作成について

親事業者の義務としても定められている契約書の作成ですが、どのような内容を記載すればよいのでしょうか。発注書の交付がない場合には、50万円の罰金が課せられます。

発注書については、フォーマットは決まっておらず自由に作成することができます。

詳細については、『ライターに契約書は必要?知らないと損する契約の知識』で紹介しているのでご確認ください。

フリーランスのライターのための契約チェックリスト

フリーランスのライターが契約時に簡単に確認できるチェックリストを以下にまとめました。1つでも当てはまる場合には、専門家への相談や下請法についてより詳しく学んでみることをおすすめします。

フリーランスのライターのための下請法・契約チェックリスト

  • 契約書や発注書を結んでから業務をスタートしましたか?
  • 契約書に支払い期日は定められていますか? また期日は納品から60日以内ですか?
  • 発注時に合意した代金が、減額されることはありませんでしたか?
  • クライアントから、記事を返品したいと言われませんでしたか?
  • 著しく低い価格で仕事を受けていませんか?
  • クライアントから、何か購入させられたりしませんでしたか?
  • 納品後に不当なやり直しをさせられませんでしたか?

下請法違反かも?と思った場合の相談先

下請法の違反があった場合にも、クライアントとの関係性から泣き寝入りしてしまうケースが多くあります。もちろん、それも選択肢としてはあり得ると思います。

ただ、不当な要求をされている、どうしていいか分からない、という場合には、一度専門家に相談されるのもよいかと思います。

無料で相談できる相談先

全国中小企業取引振興協会は、経済産業庁・中小企業庁が設置した機関です。

ひまわり中小企業センターは、日本弁護士連合会・弁護士会が提供する、電話で弁護士との面談予約ができるサービスです。一部の都道府県を除き、初回面談30分は無料相談が行えるということで困った時には一度相談してみましょう。

まとめ

ライターが知っておくべき下請法の知識について紹介しました。

契約書や発注書を結ぶ習慣がないライターもいますが、小さな勘違いが大きな損害賠償などのトラブルにつながるため、契約は非常に大切です。

フリーランスで働くうえでは、トラブルから身を守るために法律の知識は必須です。特に下請法は日々の業務に非常に役に立つので、頭に入れておくことを強くオススメします。

#ライターの契約・法律